原発新安全基準 丁寧な説明で早期に再稼働を

朝日新聞 2012年04月05日

原発暫定基準 再稼働ありきはダメだ

原発の再稼働をめぐる関係閣僚の初会合が3日に開かれ、野田首相は結論を持ち越した。

首相は、次回までに福島第一原発事故を踏まえた安全対策の暫定基準を示すよう、原子力安全・保安院に求めた。

「再稼働の基準にする」として実施したストレステストの1次評価は、当座しのぎの色彩が強かった。それだけでは不十分との判断だ。

原発に対する国民の根強い不信を前に、当初の方針を転換せざるをえなかったということだろう。事故の反省を採り入れた基準に改め、基本に立ち返って安全性を吟味する。そのための軌道修正なら、評価する。

ところが、次回の会合は週内にも開き、基準づくりも「1、2日でハチマキを巻いてやる」(藤村官房長官)のだという。

まるで「衣(ころも)を取りかえればいい」と言わんばかりのスケジュールだ。

もちろん、新たな基準といっても白地に絵を描くわけではない。保安院が独自の事故検証をもとにつくった30項目の対策を「もっとわかりやすくする」作業だ。短時間で可能との見立てなのかもしれない。

だが、このままだと北海道電力の泊原発3号機が5月初めに定期検査に入り、原発の稼働がゼロになる。その前に、関西電力・大飯原発(福井県)の再稼働に道筋をつけたい。そんな思惑が透けてみえる。

30項目の中には、大がかりな工事が必要で、時間を要するものも含まれている。「もっとわかりやすい」基準が、短期に実現できる対策だけになったら、本末転倒だ。「再稼働ありき」の基準は許されない。

確かに、夏場の電力不足は心配である。ただ、見極めるにはまだ時間がある。まずは需給見通しの精査を急ぐ。あわせて、安全対策づくりに腰をすえてかかるべきだ。

作業は当面、保安院が担当するしかないが、本来は4月に新しくできるはずだった原子力規制庁の役割だ。与野党は一刻も早く関連法案の審議に入らなければならない。

政府は、福島第一原発の周辺に、将来にわたって住民が帰宅できない区域の設定を検討しているという。原発で大きな事故が起きれば、取り返しがつかない事態になることを改めて感じさせる。

そもそも原発に「絶対安全」はない。その前提での再稼働はぎりぎりの選択である。形だけの手続きで強行しようとすれば、政権への信用は完全に失われるだろう。

読売新聞 2012年04月05日

原発新安全基準 丁寧な説明で早期に再稼働を

福井県にある関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働に向けた関係閣僚会合で、野田首相は原発の新たな安全基準の策定を指示した。

福井県知事らが、東京電力福島第一原発の事故を踏まえた安全基準なしでは再稼働に同意できない、としているためだ。

再稼働には、安全性に対する地元の理解が欠かせない。政府は安全基準の策定を急ぎ、速やかに地元の説得を開始すべきである。

民主党政権は、ストレステスト(耐性検査)の導入や原子力安全委員会の審査など、法律に基づかない手続きを次々に追加し、再稼働の実現を先延ばししてきた。

場当たり的な対応の結果、全原発54基で運転中は1基に減り、これも5月初旬に停止する。

このまま夏を迎えれば、深刻な電力不足に陥り、足踏みが続く日本経済に大打撃を与えよう。

首相や関係閣僚は時間を空費せず、大飯原発の再稼働を、早期に決断する必要がある。

新たな基準は、経済産業省の原子力安全・保安院がすでに策定した30項目の安全対策を整理し、肉付けした内容になるという。

巨大な地震や津波が起きた場合でも、全電源喪失などを回避し、福島原発のような過酷事故を防ぐための対策を、わかりやすく示すことが求められる。

地元の了承を得るには、政府が原発の安全確認に責任を持たなければならない。関係閣僚と地元自治体の間で、信頼関係を構築することも不可欠だ。

その点で、枝野経産相の不用意な発言が、関係自治体の不信感を増幅させたのは問題だ。

枝野氏は2日の参院予算委員会で、大飯原発に関し「現時点で私も再稼働反対だ」と答弁した。

原発の「地元」の範囲について「あえて聞かれれば日本全国」と語り、福井県に隣接する京都府と滋賀県の知事の理解も得る必要があるとの考えも示した。

自ら安易に再稼働へのハードルを上げるような発言を連発したのは軽率すぎる。電力安定供給に責任を負う閣僚として自覚を欠いているのではないか。

大飯原発の地元や周辺自治体の誤解や混乱を招いた。厳しく批判されたのもうなずける。

枝野氏は発言内容を一部修正したが、真意は必ずしも明確でない。このままでは、原発の立地する県や市町村の首長が、再稼働の受け入れをためらいかねない。

前言を撤回し、丁寧に説明することが必要である。

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