国際社会の再三にわたる警告にもかかわらず、北朝鮮は「平和目的の衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルの発射準備を進めている。
強行すれば、「核実験や弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射」も実施しないよう北朝鮮に求めた、2009年6月の国連安全保障理事会決議1874に違反するのは明らかである。
国際社会からの孤立を一層深めるだけだ。北朝鮮には、重ねて発射の中止を強く求める。
このままでは、3年前と同じく、北朝鮮は「衛星」発射後に核実験を強行し、国際社会との衝突コースを進む可能性がある。
北朝鮮が弾道ミサイルの発射や核実験を繰り返せば、いずれ核兵器の小型弾頭化と核ミサイルの実戦配備に行き着くだろう。
すでに中距離弾道ミサイル・ノドンの射程内にある日本にとって、脅威は格段に高まろう。
米韓露なども、発射の自制を北朝鮮に強く促している。それでも発射に踏み切るのであれば、国際社会は制裁強化など厳しく対処しなければならない。
日本政府は3日、独自の制裁措置を1年延長することを決めた。さらなる強化も検討すべきだ。
北朝鮮に国際的な圧力をかけていく上で、中国の役割は大きい。北朝鮮の3代世襲をいち早く承認しており、中朝の指導部間のパイプは維持されているからだ。
中国は、安保理常任理事国で唯一、「衛星」発射を安保理決議違反とは公式に表明していない。北朝鮮に静かに自制を働きかけているというが、成果があるのか。中国の対応を改めて注視したい。
中国・寧波で7日、玄葉外相が中韓両国外相と個別に会談し、北朝鮮に自制を求めることを確認した。8日の日中韓外相会談では、3国が一体となって、強く発射中止を北朝鮮に迫るべきである。
北朝鮮にとって「衛星」発射は、権力継承の完了を告げる祝砲という政治的意味もあるのだろう。
12日からの発射予告期間にあわせ、労働党代表者会と最高人民会議が開催される。世襲3代目の若い指導者、金正恩氏が総書記と国防委員長に就任する見通しだ。
発射の強行は、国際社会の圧力に屈しなかったとして、当面の体制固めには有効かもしれない。だが、米国との関係改善を目指した2月の米朝合意は反古となり、24万トンの食糧支援実施も遠のく。
国際評価は失墜し、急務の経済立て直しは険しさを増そう。正恩氏が発射で失うものは大きい。
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