「北」ミサイル 日米の共同対処を強化せよ

朝日新聞 2012年04月05日

北朝鮮ミサイル 発射させぬ外交努力を

北朝鮮が「人工衛星」と称して4月中旬の打ち上げを予告している弾道ミサイルの破壊措置命令を、田中防衛相が自衛隊に発令した。

ただし、自衛隊のミサイル防衛システムで備えることが、問題の決定的な解決策でないことは、はっきりしている。

何よりも日本政府がめざすべきは、外交努力によってミサイルを打たせないことだ。そのことを改めて確認しておく。

北朝鮮のミサイルは、沖縄県の先島諸島上空を通過するとみられている。

日本の領土や領海に落ちてきた時に備え、自衛隊は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を積んだイージス艦3隻を日本海と東シナ海に展開する。さらに地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)を首都圏と沖縄県内にそれぞれ置く。

こうした措置を取るのは、2009年以来、2回目だ。可能性は低くても、できる限りの準備をする。この対応には国民の理解も得られるだろう。

国連安保理決議に違反する北朝鮮の行為には、日本政府として厳しく対処する姿勢を内外に示すという意味もある。

一方で、外交努力とはいっても、北朝鮮との国交がない日本政府の出番はごく限られる。ましてや今回の「衛星打ち上げ」は、昨年12月に死去した金正日総書記の遺訓とされるだけに、発射断念に追い込むのは相当に難しそうだ。

それでも、この打ち上げには、米国と韓国だけでなく、中国もロシアも反対の意向を示している。

さらに、ミサイルの2段目が近海に落下しそうなフィリピンをはじめ、東南アジア諸国連合の加盟国も中止を求めたり懸念を表明したりしている。

日本は、こうした関係各国の動きに呼応して、北朝鮮への外交的な包囲網を強めることはできるはずだ。

北朝鮮の暴挙を契機として、各国の連携強化を図る。そんなしたたかさが、日本政府にはほしい。

今週末に中国で開かれる日中韓外相会議も、北朝鮮への警告の舞台に活用すべきだ。

これまで、北朝鮮はミサイル発射のあとに、核実験をしてきた。今回もその可能性があり、踏み切れば3回目になる。

そんなことは許せない。

自衛隊の迎撃態勢を整える一方で、外交包囲網を活用して発射中止を粘り強く働きかける。傍若無人な北朝鮮を抑え込む即効性のある妙案を見いだせない現状では、それしかない。

毎日新聞 2012年04月01日

破壊措置命令 「万一」に備えて万全を

万一の事態に備えて、万全の態勢を敷くのは政府の責任である。

政府は、北朝鮮が「衛星」として今月中旬の打ち上げを予告している長距離弾道ミサイルの対処方針を決めた。そして、田中直紀防衛相がミサイル部品などの領土・領海への落下に備え、ミサイル防衛(MD)による迎撃態勢を取るため、自衛隊法に基づく破壊措置命令を出した。

北朝鮮の通告通りなら、北朝鮮西部から発射されたミサイルは沖縄県の石垣島など先島諸島付近のはるか上空を通過するため、日本に被害が及ぶことはない。しかし、何らかのトラブルが起きて日本の領域に落下し、重大な被害が発生する可能性も否定できない。自衛隊法は、ミサイルでない落下物にも、MDで対応できるとしている。

政府は、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦を東シナ海や日本海に配備し、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)を沖縄本島や石垣島、宮古島などに配備する。SM3による大気圏外の迎撃が失敗した場合にPAC3で対応する2段構えだ。

国連安保理決議は、弾道ミサイル計画にかかわる全ての活動停止を北朝鮮に求めている。衛星であっても決議違反は明白だ。北朝鮮に対しては、発射すれば国際社会との緊張をもたらし、経済制裁強化など大きな代償を支払わねばならないことを繰り返し説明し、自制を求める外交努力を最後まであきらめてはならない。一方で、北朝鮮が発射を強行する姿勢を崩さない以上、いざという時に備えて、政府があらゆる態勢を整えるのは当然である。

北朝鮮の発射に対し、MDで対応するのは2回目となる。前回の09年4月には、ミサイルは秋田、岩手両県の上空を飛んだが、自衛隊内の情報伝達に不備があり、発射前日に誤った「発射情報」が地方自治体や報道機関に流れて混乱した。

発射の判断では、米国の早期警戒衛星からの情報が重要な役割を果たす。米国との連携を密にすると同時に、万一、被害が出た場合に備えて救援のための部隊配備にも遺漏があってはならない。

破壊措置命令に基づき迎撃措置などに当たる自衛隊の指揮を執る田中防衛相に対しては、自民、公明両党が問責決議案を提出する動きを見せている。国会答弁の迷走など田中氏の言動に不安を抱く国民も多いに違いない。

しかし、北朝鮮の発射予告時期は約2週間後に迫っている。新たに混乱を招く事態は避けなければならない。政府が一体となって乗り切る以外にあるまい。自衛隊の最高指揮官である野田佳彦首相は、そのことを強く自覚してもらいたい。

読売新聞 2012年04月08日

北朝鮮ミサイル 発射強行は孤立を深める道だ

国際社会の再三にわたる警告にもかかわらず、北朝鮮は「平和目的の衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルの発射準備を進めている。

強行すれば、「核実験や弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射」も実施しないよう北朝鮮に求めた、2009年6月の国連安全保障理事会決議1874に違反するのは明らかである。

国際社会からの孤立を一層深めるだけだ。北朝鮮には、重ねて発射の中止を強く求める。

このままでは、3年前と同じく、北朝鮮は「衛星」発射後に核実験を強行し、国際社会との衝突コースを進む可能性がある。

北朝鮮が弾道ミサイルの発射や核実験を繰り返せば、いずれ核兵器の小型弾頭化と核ミサイルの実戦配備に行き着くだろう。

すでに中距離弾道ミサイル・ノドンの射程内にある日本にとって、脅威は格段に高まろう。

米韓露なども、発射の自制を北朝鮮に強く促している。それでも発射に踏み切るのであれば、国際社会は制裁強化など厳しく対処しなければならない。

日本政府は3日、独自の制裁措置を1年延長することを決めた。さらなる強化も検討すべきだ。

北朝鮮に国際的な圧力をかけていく上で、中国の役割は大きい。北朝鮮の3代世襲をいち早く承認しており、中朝の指導部間のパイプは維持されているからだ。

中国は、安保理常任理事国で唯一、「衛星」発射を安保理決議違反とは公式に表明していない。北朝鮮に静かに自制を働きかけているというが、成果があるのか。中国の対応を改めて注視したい。

中国・寧波で7日、玄葉外相が中韓両国外相と個別に会談し、北朝鮮に自制を求めることを確認した。8日の日中韓外相会談では、3国が一体となって、強く発射中止を北朝鮮に迫るべきである。

北朝鮮にとって「衛星」発射は、権力継承の完了を告げる祝砲という政治的意味もあるのだろう。

12日からの発射予告期間にあわせ、労働党代表者会と最高人民会議が開催される。世襲3代目の若い指導者、金正恩氏が総書記と国防委員長に就任する見通しだ。

発射の強行は、国際社会の圧力に屈しなかったとして、当面の体制固めには有効かもしれない。だが、米国との関係改善を目指した2月の米朝合意は反古(ほご)となり、24万トンの食糧支援実施も遠のく。

国際評価は失墜し、急務の経済立て直しは険しさを増そう。正恩氏が発射で失うものは大きい。

読売新聞 2012年04月01日

「北」ミサイル 日米の共同対処を強化せよ

自衛隊は、不測の事態を想定し、万全の準備を進めてもらいたい。

田中防衛相がミサイルの破壊措置命令を自衛隊に発令した。北朝鮮が「人工衛星」と称して発射する長距離弾道ミサイルが日本国内に落下した場合、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃するためだ。

海上自衛隊は、スタンダードミサイル3を搭載したイージス艦3隻を東シナ海などに展開する。航空自衛隊は、地対空誘導弾パトリオットミサイル3(PAC3)を沖縄県と首都圏の計7か所に配備する。2段階で迎撃する方針だ。

北朝鮮のミサイルが日本の領土・領海に着弾するのは、故障などによる極めてまれなケースに限られる。正常に飛行すれば、1段目は韓国西方沖の黄海に、2段目はフィリピン沖に落下する。

それでも、万一の事態に備えるのが安全保障の要諦だ。指揮官たる田中防衛相の資質には不安を禁じ得ないが、防衛省は、4月12~16日の発射予告日に向けて厳戒態勢を構築すべきだ。

陸上自衛隊も、与那国島などに救難隊を派遣する方向で地元自治体と調整している。南西防衛を強化するため、陸自は数年後に与那国島に部隊を配備する予定だ。

今回、陸自と自治体・住民がミサイル対処の協議を重ねることは将来の部隊配備や有事の備えに向けて良い効果をもたらそう。

2009年4月の北朝鮮のミサイル発射時には、防衛省は「発射」を誤報した。レーダーの誤探知や情報伝達ミスが重なった。

発射から落下まで10分程度しかない弾道ミサイルへの対応には、迅速さが重要だが、無論、正確さもおろそかにできない。

政府は今回、発射情報を人工衛星経由で関係自治体に速報するため、全国瞬時警報システム(Jアラート)を初めて活用する。

09年の時点では自治体の整備率が11%だったが、現在は98%まで向上している。住民への適切な情報提供に努めてほしい。

ミサイル対処で重要なのは、日米の連携である。

その意味で、空自の航空総隊司令部が3月末、米軍横田基地に移転し、日米の統合運用調整所を常設したことを評価したい。防空面の協力が一段と進展しよう。

日本は、北朝鮮のミサイル発射基地での部隊の動向やミサイル発射の早期警戒情報などについて、米国の衛星情報に大きく依存している。日米の情報共有や、部隊の運用面での協力を着実に拡大することが求められる。

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