いやはや、ここまで日本外交の「不在」ぶりを目の当たりにすると、残念を通り越して空しくなる。
おととい、核保安サミット出席のため、各国の首脳がソウルに集った。オバマ米大統領、胡錦濤・中国国家主席、メドベージェフ・ロシア大統領――。
李明博・韓国大統領らとの個別会談で旧交を温めあい、北朝鮮の「人工衛星」と称する弾道ミサイルの発射について、懸念を表明した。
胡主席は「朝鮮半島の緊張緩和に逆らう行為を望まない」と踏み込み、メドベージェフ大統領は「国連安保理決議違反だ」と明確に指摘した。
各国の協調で、かつてない北朝鮮包囲網が敷かれつつある。北朝鮮の打ち上げに、外交力で圧力をかけたことは確かだ。
そのころ、野田首相は国会にいた。午前9時から午後5時まで、参院予算委員会で与野党議員の質問に答えていた。ソウルに向かったのは夜になってからだった。
首相はきのう、57の国や国際機関が参加した席で、福島第一原発の事故への取り組みなどを説明し、イランや北朝鮮の核開発への憂慮を表明した。
だが、オバマ大統領ら米中韓ロなど各国首脳と言葉を交わしたのは、会合の合間の立ち話だけだった。
午後には、あわただしく帰国した。夜に予定されていた消費増税法案をめぐる民主党の会議に備えるためだ。
各国の外交力と、内向きな日本――。この違いは何なのだ。
もともと、野田首相は核サミットの主人公のひとりになって当然だったはずだ。
日本は、これだけの原発事故を経験しているのだ。世界と共有すべき教訓も、ともに解決していくべき課題も山ほどある。北朝鮮のミサイルに対しては、最も切迫した脅威を受ける国ではないか。
それなのに、首脳たちとひざ詰めで話し合う機会を、みすみす逃してしまった。
野田政権は参院では少数与党であり、新年度予算を早く成立させるには、野党の国会出席要求をのまざるを得ない事情があるのはわかる。
だが、それにしてもである。今回の核サミットに、政府・与党が熱意を持っていれば、国会審議を丸2日間休んで、ソウルに飛ぶこともできたはずだ。
毎年、首相が代わる日本の国際社会での存在感は小さくなるばかりだ。それだけに、隣国での晴れ舞台を活用できない日本外交が、何とも歯がゆい。
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