地価底入れに向けた兆しはあるものの、反転につながるかどうか、なお不透明と言えよう。
国土交通省が発表した2012年1月1日時点の公示地価は、1年前に比べて全国の住宅地で2・3%、商業地で3・1%下落した。
08年秋のリーマン・ショック以降、4年連続のマイナスとなったが、下落率は2年連続で縮小した。都市部から地方まで、上昇か横ばいに転じた地点が大幅に増えたことが特徴である。
住宅地の需要は底堅く、改善傾向がみられるのは、住宅ローン減税や住宅エコポイントなどの優遇政策の効果だろう。
首都圏マンションの契約率が、好調の目安とされる70%程度で推移しているのも明るい材料だ。
しかし、地価が大幅に落ち込んだ地域も少なくない。楽観は禁物である。日本経済の低迷や円高、欧州債務危機などによる地価の下押し圧力は根強い。
懸念されるのは商業地だ。
都心では今年、大規模オフィスゾーンの開発が相次ぎ、物件の大量供給が見込まれる。一方で需要は長期的な減少傾向にあるため、一段と賃料が下がり、地価下落が長引くことになりかねない。
とくに地方の商業地は、人口減少や地域経済の疲弊などを受け、地価の改善テンポが鈍い。
こうした状況が続けば、企業の資金調達や個人消費に悪影響が広がる。土地デフレの長期化を食い止めることが必要である。
海外投資家も円高定着で日本への不動産投資を縮小している。政府は、円高対策に全力を挙げ、景気回復を図らねばならない。
東日本大震災や原発事故を受けて、被災地の地価も心配だ。
津波被害に見舞われた岩手、宮城両県の沿岸部では、10%以上も下落した地点が目立った。一方、浸水を免れた高台住宅への需要が高まり、地価が上昇に転じる二極化現象が起きている。
全国の住宅地で上昇率の高い上位10地点のうち、9地点を宮城県が占めた。石巻市では60%も急騰したところがあった。
福島県は住宅地、商業地ともに地価は大きく下落した。
液状化被害が大きかった千葉県浦安市の住宅地価が下落に転じるなど、東京湾岸部の物件を敬遠する動きは続いている。
東北の被災地については、投機的な取引を招かないよう、監視を強めるべきだ。地価の二極化を解消するためにも、自治体は街づくり計画の実現を急いでほしい。
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