アフガン大統領選 次期政権にも支援続けよ

毎日新聞 2009年08月22日

アフガニスタン 大統領選の透明性保て

空恐ろしくなるような選挙妨害だ。20日に投票されたアフガニスタン大統領選は、各地でイスラム原理主義の旧支配勢力タリバンによる投票所襲撃が相次ぎ、銃撃戦や爆発もあった。アフガン当局によると、襲撃は130件を超え、市民・警官など20人余りが死亡したという。

治安悪化に歯止めがかからない現状を浮き彫りにする出来事だ。アフガンでは近年、タリバンが攻勢を強め、北大西洋条約機構(NATO)加盟国主体の国際治安支援部隊(ISAF)は苦戦を続けている。

タリバンが投票所周辺でロケット弾まで使ったのは、選挙妨害のためには市民の無差別殺傷も辞さないことを示す。卑劣と言うしかない。他方、日本を含む国際監視団が公正な選挙を側面支援したにもかかわらず、買収などの不正が横行したともいわれる。憂慮すべきことである。

選挙後、優勢が伝えられたカルザイ大統領と、有力対抗馬のアブドラ元外相の陣営がともに「勝利」を宣言し、情勢は混とんとしてきた。投票率は前回(約70%)を大幅に下回る40~50%とみられ、選挙の正当性が疑問視される可能性もある。

今回、過半数を得る候補者がいなければ、上位2人の決選投票となるが、どんな経緯をたどるにせよ、開票作業が公正かつ透明に行われ、アフガン国民も国際社会も納得できる形で指導者が選ばれるよう期待したい。治安当局は開票作業などの安全確保に努めてほしい。危険を冒して1票を投じた多くの有権者の意思を正しく生かさなければならない。

今回の選挙は04年に初当選したカルザイ氏の信任投票ともいえるものだ。01年の同時多発テロを受けた米軍のアフガン攻撃で、タリバン政権は崩壊し親米のカルザイ氏が大統領になった。しかし、庶民の暮らしに大きな改善はなく、政権の「汚職体質」が目立つ上に、米軍の誤爆による市民死傷が後を絶たない。

そんな状況下で、人々は米国の「かいらい」とも言われたカルザイ氏への風当たりを強め、同氏と距離を置くアブドラ元外相らが支持を増やしたといえよう。しかし、誰が当選しようと、この国の最大の懸案は治安回復であり、タリバンや国際テロ組織「アルカイダ」などに脅かされない政権を作る必要がある。

その点、治安では最大の後ろ盾である米国の世論が冷めているのが気がかりだ。ワシントン・ポスト紙などの合同世論調査では、アフガンで「戦う価値がない」と答えた人は51%に上り、07年の調査開始以来初めて半数を超えたという。米オバマ政権は、タリバン穏健派との対話拡大も含めて、アフガンでの戦い方を改めて考えなければなるまい。

読売新聞 2009年08月25日

アフガン選挙 まず必要な正当性の確保

政情の安定化にはほど遠い。そんな現実を如実に示すアフガニスタン大統領選である。

投票日は予想通り、旧支配勢力タリバンによるテロや銃撃にさらされ、警察官や有権者が死亡した。7000か所の投票所のうち800か所が閉鎖を余儀なくされた。

それだけでも、選挙に疑義を挟まれかねないのに、選挙結果をめぐる有力候補の動きが、一層の混迷を引き起こしつつある。

再選を狙うカルザイ大統領と、対立候補であるアブドラ前外相の両陣営とも、勝利宣言をして譲らないためだ。加えて、双方から200件以上の選挙不正の申し立てが提出された。

憂慮すべき事態だ。誰が選出されようと、今、何より求められるのは、新政権の正当性である。それが揺らげば、アフガン統治はほとんど不可能になるだろう。

両陣営は、党派性むき出しの行動を慎み、票の集計や不正の調査に関しては、独立機関に判断を委ねるべきだ。

タリバンは8年前、アフガンから放逐されたはずだった。それが今や、南部や東部といった地方のみならず、首都カブールの治安を脅かすまで復活した。

そうした事態を許した最大の責任は、カルザイ政権にあると見るべきだろう。

治安改善を果たすことができなかったのは明らかだが、当然、経済復興もままならず、多くの失業者が生まれた。生活のために、タリバン側に立つ国民が少なくないとさえいわれる。

政府高官らの間に、汚職や腐敗のうわさが絶えないのも、カルザイ政権の統治能力の欠如を物語っている。有力者との政治的取引をためらわないカルザイ氏の手法には、内外から批判も多かった。

懸念されるのは、米英を中心とする国際社会の間に、支援疲れが見られることだ。タリバンの復活で、駐留外国軍兵士の犠牲者が急増していることが、各国民の厭戦(えんせん)気分を強めている。

最近の世論調査で、米国民の過半数が、アフガンでは「戦う価値がない」と疑問視していることが分かった。しかし、オバマ米大統領は、「テロとの戦い」の主戦場をイラクからアフガンへと移し、兵力増派を約束してきた。

アフガンを見放すわけにはいかない、ということだろう。大統領選を見ても、治安部隊の強化が急務だ。資金面を含む多様な支援も必要だ。新政権に、注文をつける場面が増えるだろう。

産経新聞 2009年08月22日

アフガン大統領選 次期政権にも支援続けよ

テロとの戦いの最前線であるアフガニスタンで大統領選挙が行われ、開票作業が進んでいる。

1700万有権者は、非常な勇気が求められた。イスラム原理主義勢力タリバンの脅威にさらされながらの投票だったからだ。

タリバンは、投票済みのインクがついた指を切り落とすと脅した。米軍と国際治安支援部隊(ISAF)、アフガン国軍の計30万人が厳戒態勢を敷く中、テロが全土で頻発し、約7千カ所の投票所のうち約800カ所が開設できなかった。死者は市民を含め50人以上にのぼる。

投票率は前回(2004年)の約70%を大きく下回る見通しだ。それでも女性たちを含めて有権者の半数が覚悟を決めて投票した事実は、テロ撲滅と民主化要求の切実な声を明確に反映している。「タリバンの妨害工作にもかかわらず、(大統領選は)成功した」(オバマ米大統領)との評価は、的はずれではない。

選挙結果は9月17日に正式発表される。現職大統領カルザイ氏の優勢が伝えられるが、誰が次期政権を担うにせよ、治安回復と経済再建を通じて自立した安定国家の建設が急務だ。

米国を中心とする国際社会の支援が欠かせない。タリバン掃討を目指す駐留米軍は、5万7千人の現有兵力を今年末までに6万8千人に増やす計画だ。治安確立のためには、アフガン国軍への権限移譲は拙速を避けるべきだろう。

アフガンのいま一つの課題は、麻薬の撲滅である。世界最大のケシ栽培国で、タリバンが麻薬取引で年間67億円もの収入を得て武器購入にあてているからだ。ケシ栽培農家に資金や技術を与え、小麦などへの転換をはかる支援活動の一層の推進が求められる。

01年の米中枢同時テロはアフガンを拠点とした国際テロ組織アルカーイダが引き起こしたものだった。「9・11」で24人の日本人が犠牲になったことを忘れてはなるまい。アフガンの安定は、日本の安全にも直結するとの危機意識をもつ必要がある。

01年以降、約2千億円のアフガン支援を行った日本は、インド洋で海上自衛隊による補給支援活動を実施中だ。民主党の鳩山由紀夫代表は、来年1月以降の延長はしないと明言しているが、代わりに何をすべきかを示していない。民主党政権が誕生した場合、再考すべき緊急課題の一つである。

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